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高知家庭裁判所 昭和50年(少イ)2号 判決 1975年8月13日

被告人 和田健一

主文

被告人を懲役一〇月に処する。

この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は昭和四八年三月中旬ころ、高知市帯屋町一丁目二番一一号の喫茶店「みにょん」において、同店の従業員で、かねてからの被告人のいわゆるホモ仲間でもあり、またそれまでにも俗に「素股」「尺八」などと称する性交類似行為の相手方として、比較的年長の男性を被告人に引き合わせ、その紹介料名下に被告人から金員を得ていたこともある中野寛から、同様の金員を被告人から得たい内意、見込のもとに、今回は同店に出入たむろする年若の中学生、高校生等の男児を右性交類似行為の相手方として被告人に紹介する旨の意思あることを告げられるや、これを容れ、該行為一回につき一、〇〇〇円の紹介料名下の金員を右中野寛に提供支払することを確約して、同人の右意思を確実強固ならしめ、その約東に基づき、同人をして、○美○一(当時一四年)、○保○和(当時一六年)、○山○人(当時一五年)、○森○晃(当時一四年)、○本○博(当時一五年)の五名に対し、これらの者がいずれも満一八歳に満たない児童であることを知りながら、同児らを言葉巧みに使嗾慫慂して、被告人の前記性交類似行為の相手方となることを承諾させ、右中野からこれら児童の紹介を受けたうえ、いずれも高知市本町一丁目四番一一号の岡田アパート三階の中野寛の居室において

(一)  昭和四八年四月中旬ころ、右○美○一をして、その股間に被告人の性器を挿入させるなどの

(二)  同年七月中旬ころ、右○保○和をして、その性器を被告人の口腔内に挿入させるなどの

(三)  同年七月中旬ころ、右○山○人をして、右(二)と同様

(四)  同年一〇月中旬たろ、右○森○晃をして、右(二)と同様の

(五)  同年一〇月中旬ころ、右○本○博をして、右(二)と同様の

各性交類似行為をさせ、もつて中野寛の児童に淫行をさせる行為を各容易ならしめて、これを幇助したものである。

(証拠の標目)(編略)

なお本件につき、被告人は判示日時場所において、中野寛に対し、判示性交類似行為を行う者の紹介を依頼する趣旨のもとに「一回につき紹介料を一、〇〇〇円出すから男の子を紹介してくれ」などと言つて、中野に右依頼を承諾させ、同人に判示児童福祉法違反の各犯行を決意実行させた教唆犯に該当するとして起訴されたものであるところ、本件公判においては、正犯者中野の右決意の時期如何が主要な争点になり、この点に関して、当事者双方の攻撃防御が重点的に行なわれた。

そして、当裁判所は審理の結果、前掲各証拠を総合して、被告人の所為は判示のとおり幇助犯に該当すると認定した次第であるが、右の公判経過等にかんがみ、かく認定判決するについては、改めて訴因変更の手続をとる必要はないものと解する。

(法令の適用)

児童福祉法三四条一項六号、六〇条一項、刑法六二条一項(懲役刑選択)。刑法六三条、六八条三号。同法四五条前段、四七条、一〇条。同法二五条一項。刑訴法一八一条一項本文。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 田村承三)

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